性ホルモンの働きとは?摂取するとどうなる?
はじめに
人間は、性ホルモンによって男らしくなったり、女らしくなったり、男性的な機能、女性的な機能を有したりします。自分の体に違和感を覚える人はこの性ホルモンのせいかもしれません。性同一性障害の治療では、主に体の性と違う方の性ホルモンを投与します。
では一体性ホルモンとは何か?どんな影響があるのか?確認してみましょう。
※本記事の男性・女性という表記は、体の性別のことを指しています。
本記事は、約20分で読むことができます。
性ホルモンとは
性ホルモンとはステロイドホルモンの一種で、第一次性徴、第二次性徴などの外形的性差を生じさせたり、妊娠の成立・維持に関与します。
性ホルモンは男性ホルモン(アンドロゲン)、女性ホルモンに分けられ、女性ホルモンはエストロゲン(卵胞ホルモン)とアンドロゲン(黄体ホルモン)に分けられます。男性ホルモンは主に精巣から分泌され、女性ホルモンは主に卵巣から分泌されます。
一次性徴とは
一次性徴とは、基本的に母体の中で、生まれてくる前に性器が形成されることです。
Y染色体をもった精子と受精した受精卵からはY染色体上の遺伝子によって精巣が形成され、抗ミュラー管ホルモンの分泌によってミュラー管が退縮されることで卵巣が生成されず、精巣から男性ホルモン(アンドロゲン)が分泌されて男性器が形成されます。
X染色体をもった精子と受精した受精卵からはミュラー管が発達され、卵巣、女性器が生成されます。
これらの形成がだいたい妊娠16週の間に起こります。この時期からエコー検査で性別が判定可能になります。(遺伝子検査の場合、7週で判定可能です)
中絶が可能なのは22週目未満(21週と6日)までと日本の法律で決められているので、性別が分かってから中絶することも(法律上は)可能です。
中絶の可能性がある人には、医者が性別を教えてくれない場合が多いよ💦
第二次性徴とは
第二次性徴はいわゆる思春期の時期に起こる、男女の特徴が顕著に表れることです。
脳の下垂体から分泌されるゴナドトロピンという性腺刺激ホルモンが卵巣や精巣に働き掛け、性ホルモンが作られることで起こります。
男性は11歳頃に精巣が大きくなり生殖器が成熟し、陰毛の発生、声変わりが起こります。
女性は10歳頃に乳房が発育、陰毛の発生、初潮と進んでいきます。初潮の平均年齢は12~13歳とされています。
この時期に男女ともに身長も大きく伸びますが、男性の方が女性より約12cm大きくなります。骨格も男性の方ががっしりとした形になっていきます。
第二次性徴前に性ホルモンの分泌量を調節することができれば、第二次性徴を止めることができ、自分の体の違和感をかなり減らすことが可能です。
第二次性徴を過ぎたらもう手遅れなの!?
とがっかりされる方も多いですが、性同一性障害の治療を行っている人はほとんどが18歳以上なので、自分の体に違和感がある場合でも、これから違和感が少ない体にしていくことは可能です。
まずは性ホルモンの機能について見ていきましょう。
男性ホルモン(アンドロゲン)とは
男性ホルモンは、内訳するとメインになるテストステロンのほか、ジヒドロテストステロン(DHT)、デヒドロエピアンドロストロン(DHEA)、アンドロステロン、アンドロステンジオン(androstenedione)、エピアンドロステロンなどがあります。この中でも主要なテストステロンについて解説します。
テストステロンの主な働きは、筋肉量の増加、骨密度の増加です。筋肉量が増え、男性らしいがっちりとした体格になります。体毛などの発毛にも関与します。造血作用もあります。
精神的にも作用し、性欲の増加・精神力・やる気の向上、精神の安定につながります。
精神の安定にいいの!?
テストステロンを増やすには、筋トレやテストステロンの注射が有効です。
心が疲れた時に筋トレをしたくなる人は、男性ホルモンの影響かもしれません。
エストロゲン(卵胞ホルモン)とは
女性ホルモンの1つであるエストロゲンの主な働きは、女性らしい丸みのある体形をつくったり、肌を美しくしたりする作用があります。乳房を大きくする作用もあります。
また、丈夫な骨を維持したり、体の水分量を調節、コレステロール値の調節、精神の安定など女性の健康のために良い効果をもたらします。男女で比較した際、40代までの平均コレステロール値が女性の方が低いのは、エストロゲンの影響と言われています。
しかし、40代頃からエストロゲンの分泌量は減っていき、閉経を迎えると大幅にエストロゲンの分泌量が減少します。ホルモンバランスが大幅に崩れる閉経前後の10年間を更年期といい、健康や精神面で不快な症状が起きやすくなります。
良い効果が多いだけに、急激に分泌量が少なくなるとデメリットもあるね
プロゲステロン(黄体ホルモン)とは
プロゲステロンとは妊娠に大きくかかわってくるホルモンで、基礎体温を上げ、受精卵が着床しやすい状態にし、乳腺を発達させる効果があります。
体温が上がるので、体温を測ればプロゲステロンが分泌されているかどうかを確認することができます。
女性のホルモン周期とは
女性には性ホルモンの周期が存在し、精神的にも大きな影響を与えます。
女性の周期を3つに分けると生理期・卵胞期・黄体期に分けられます。個人差はありますが、約28日で一周するといわれています。
生理期が始まるとエストロゲンの分泌量が増え、生理期が終わると卵胞期になります。
卵胞期はエストロゲンが優位になるため、セロトニンの分泌量が増えて気分的に良くなり、肌も綺麗になります。
排卵が起こると、エストロゲンの分泌量が減り、プロゲステロンの分泌が増え、黄体期になります。エストロゲンの分泌量が減るため、精神的には不安定になります。体温は高温になります。
プロゲステロンの分泌が減り、黄体期が終わると、子宮内膜が剥がれ落ち生理期が始まります。
黄体期の後半にイライラや肌荒れなどが起きることがあり、これを月経前症候群(PMS)といいます。
イライラや精神的な不安定さの原因は、ホルモン周期のせいかも💦
低用量ピルの効果とは?
避妊用やPMSの緩和のため、低用量ピルを服用している方も多いと思います。
ピルとは上記のエストロゲンとプロゲステロンが配合された飲み薬です。
ピルを毎日飲んでいると、エストロゲンとプロゲステロンが体内にある状態になり、脳は体がずっと黄体期だと勘違いし、脳が卵巣に命令を出さなくなり、卵巣からのホルモンの分泌が止まります。
するとホルモン周期が無くなり、排卵が起こらなくなるため避妊効果をもたらします。また体内のエストロゲンの量が一定になるため精神的にも安定します。
ピルの服用をやめるとホルモン周期が始まるため、排卵が起こるようになり服用前の状態に戻り、妊娠ができる状態になります。
副作用としては血栓症に気を付ける必要があります。
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男性が女性ホルモンを摂取するとどうなる?
二次性徴前の男性が女性ホルモンを摂取すると、二次性徴が起こらなくなり、女性とほぼ同じ体つきになるため二次性徴後に摂取した場合を説明します。
二次性徴後の男性が女性ホルモンを摂取すると、
- 肌がきれいになる
- 精巣が小さくなる・性欲が減退する・ED(勃起障害)になる
- 体毛の伸びる速さが減少する
- 乳房が痛みを感じ、大きくなる
- 筋肉量が減少する
- やる気が減退する
- 前立腺が肥大する・排尿障害が起こる
- 頭髪が増える
などの効果が出ます。見た目でもわかるほどに女性っぽい見た目になります。あまり知られていない効果としては、前立腺はエストロゲンと反応して肥大化する性質があるため、排尿障害が起こる可能性があります。
変わらない変化としては
- 声は高くならない
- 骨格は変わらない(背は縮まない)
- 体毛の太さは変わらない?
ので、女性らしい声を出したい場合は練習したり、声帯の手術を受ける必要があります。体毛についてはホルモンの影響を信じるよりも、こまめに剃るか、脱毛サロンに通う方が手っ取り早いです。特に髭が濃い場合は注意が必要です。
女性が男性ホルモンを摂取するとどうなる?
二次性徴前の女性が男性ホルモンを摂取すると、二次性徴が起こらなくなり、男性とほぼ同じ体つきになるため二次性徴後に摂取した場合を説明します。
二次性徴後の女性が男性ホルモンを摂取すると、
- 生理が止まる
- ニキビが増える・肌がオイリーになる
- 性欲が強くなる
- 体毛が濃くなる
- 乳房の成長が止まる
- 頭髪が薄くなる
- 筋肉量が増加する
- やる気が増大する
- クリトリスが肥大する・膣が委縮する
- 声が低音化する
- 多血症になる
などの効果があります。男性ホルモンは効果が強く、短い期間で男性らしい見た目になります。また男性ホルモンを摂取すると声が出しにくくなり、2年ほどで落ち着いた低い声が出せるようになります。声帯は不可逆的変化であり、1度低くなった声は高くなることはありません。
変わらない変化としては、
- 乳房はほとんど小さくならない
- 骨格は変わらない(背は伸びない)
ので、乳房が気になる場合はダイエットによって乳房の脂肪を落とすか、摘出手術を行う必要があります。
自分の性別と違う性ホルモンを摂取する際の注意点
どちらの性ホルモンを摂取する場合でも、子供は永久的に作れなくなります。
また、もし妊娠できたとしても奇形児が生まれるリスクが高くなるため、子供を作りたいと考えている場合は自分の性別と違う性ホルモンは必ず摂取しないようにしましょう。
また、ずっと安定してきていた性ホルモンのバランスが乱れるため、かなり精神的に不調になる場合があります。精神的に不安定になった場合は医師と相談しましょう。
女性ホルモン製剤全般に言えることですが、血栓症のリスクがあります。また、乳がんなど性別特有の病気にもかかりやすくなるリスクがあります。
性ホルモンは人を変えてしまう力のあるホルモンです。摂取する際はリスクを理解して、軽い気持ちで摂取しないようにしましょう。
まとめ
かなり長文になりましたが、いかがでしょうか。
自分の体に違和感があるというのはとても辛いと思います。性同一性障害の場合は早く治療したいという気持ちもあると思いますが、リスクを理解したうえで、ホルモンを摂取するようにしましょう。
そして、性ホルモンを摂取してもパス度(MtFの場合は女性、FtMの場合は男性に見えるかどうかの指標)が高くなるかどうかは本人の努力次第の部分もあります。性ホルモンに過度な期待をしすぎないようにしましょう。
決して、ファッション感覚で性ホルモンに手を出さないようにしましょう。
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記事を読んでいただき、ありがとうございました。
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